赤ちゃんの健康を守るうえで欠かせないのが、予防接種です。生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ自分の力で感染症を防ぐことができません。そのため、生後2か月を迎えるころから、さまざまなワクチン接種が始まります。
とはいえ、スケジュールが複雑で、「いつ・どのワクチンを・何回接種すればよいのか」と迷ってしまう保護者も多いのではないでしょうか。さらに、体調がすぐれないときの判断や、接種後の過ごし方にも不安を感じることがあるかもしれません。
この記事では、月齢別のワクチンスケジュールや定期接種と任意接種の違い、体調管理のポイント、副反応への備え方など、赤ちゃんの予防接種に関する基本情報をわかりやすく整理しています。安心して予防接種を進めるための参考にしてください。
いつ何を打つ?月齢別ワクチン接種スケジュールの基本
赤ちゃんの予防接種は、生後2か月から本格的に始まり、1歳の誕生日までに多くのワクチンを計画的に接種する必要があります。
特に生後数か月の間は、複数のワクチンを並行して受けるケースも多く、スケジュールが複雑に感じられるかもしれません。ここでは、定期接種と任意接種の違いを押さえながら、月齢ごとの接種内容とタイミングをわかりやすく整理していきます。
定期接種と任意接種の違いを知ろう
赤ちゃんの予防接種には「定期接種」と「任意接種」の2種類があります。定期接種とは、国が実施を推奨し、原則として公費で受けられるワクチンです。対象となる年齢や回数が決まっており、スケジュールに沿って接種すれば自己負担はありません。
ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、四種混合、BCG、麻しん風しんなどがこれにあたります。一方、任意接種は予防接種法に基づかないもので、費用が自己負担になることが多いですが、感染症予防の重要性は変わりません。ロタウイルスやおたふくかぜ、水ぼうそうなどが含まれます。
任意という言葉から「受けなくてもいいもの」と受け取られがちですが、実際には赤ちゃんを重い病気から守るために受けておくべきワクチンも少なくありません。定期・任意にかかわらず、それぞれのワクチンが防ぐ病気の特徴を理解し、かかりつけ医と相談しながら接種の計画を立てることが大切です。
生後2か月〜1歳までのワクチンスケジュール早見表
赤ちゃんのワクチン接種は生後2か月から本格的に始まり、1歳になるまでに複数のワクチンを計画的に接種していきます。たとえば生後2か月では、ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス、四種混合などの初回接種が一斉にスタートします。
生後3か月にはこれらの2回目、さらに生後4か月で3回目の接種というように、月齢ごとに接種スケジュールが組まれています。生後5か月~6か月にかけてBCGの接種が加わり、生後7か月から11か月には一部のワクチンの追加接種も必要です。
そして1歳を迎えると、麻しん風しん(MR)、水ぼうそう、おたふくかぜなどのワクチン接種が始まります。これらは感染症の重症化を防ぐうえで重要なものばかりです。スケジュールが重なる時期も多いため、母子手帳や自治体からの案内を参考にしながら、早めに計画を立てておくと安心です。
月齢 | 接種する主なワクチン(回数) | 接種区分 |
生後2か月 | ・ヒブ(1回目) ・小児用肺炎球菌(1回目) ・B型肝炎(1回目) ・四種混合(1回目) ・ロタウイルス(1回目) | 定期・任意 |
生後3か月 | ・ヒブ(2回目) ・肺炎球菌(2回目) ・四種混合(2回目) ・ロタウイルス(2回目) | 定期・任意 |
生後4か月 | ・ヒブ(3回目) ・肺炎球菌(3回目) ・四種混合(3回目) | 定期 |
生後5〜6か月 | ・BCG(1回) ・B型肝炎(2回目) | 定期 |
生後7〜8か月 | ・必要に応じてB型肝炎(3回目) (※1回目から27日以上、2回目から20週以上あける) | 定期 |
生後9〜11か月 | ・一部の任意接種が可能(医師と相談) | 任意 |
1歳 | ・麻しん風しん(MR:1期) ・水痘(水ぼうそう) ・おたふくかぜ(任意) ・ヒブ(追加) ・肺炎球菌(追加) | 定期・任意 |
接種の間隔や回数に注意!同時接種の考え方
赤ちゃんのワクチン接種では、同じ種類のワクチンを数回に分けて接種する「複数回接種」が基本です。たとえばヒブワクチンや四種混合ワクチンなどは、初回接種後に数回の追加接種が必要であり、間隔が決まっています。
ワクチンごとに必要な回数や接種の間隔は異なるため、接種忘れや間違いがないように注意が必要です。また、短期間に複数のワクチンを打つことになるため、「同時接種」を選ぶ家庭も多くなっています。
同時接種とは、1回の受診で2種類以上のワクチンを一緒に打つ方法で、通院回数を減らすことができるほか、予防効果を遅らせることなく受けられるのが利点です。厚生労働省も、原則として同時接種を安全と認めており、医療現場でも一般的に行われています。
ただし、赤ちゃんの体調やワクチンの種類によっては医師と相談のうえで調整する必要があります。無理のない計画で進めていくことが大切です。
接種前に確認したい体調と受診準備のポイント
予防接種は健康な状態で受けることが大前提です。赤ちゃんの機嫌や体温など、いつもと少し違う様子が見られるときは、接種を見送る判断も必要になります。
また、当日のスムーズな受診には、事前準備も欠かせません。ここでは、接種を受ける前に確認すべき赤ちゃんの体調や、持ち物・服装などの準備について解説します。
微熱・咳があるときはどうする?医師への相談目安
予防接種は基本的に「健康な状態」で受けることが原則ですが、赤ちゃんは体調が安定しにくく、接種当日に微熱や咳があることも珍しくありません。では、どの程度の体調不良なら接種を見送るべきなのでしょうか。
一般的に、37.5度以上の発熱がある場合や、ぐったりしていたり、食欲が明らかに落ちているときは、無理に接種せず医師に相談することが推奨されます。一方、37.4度以下の微熱や、軽い鼻水・咳のみで機嫌や食欲がいつも通りであれば、接種が可能と判断される場合もあります。
ただし判断は個々の状況によって異なるため、迷った場合は必ず医療機関に事前に連絡を入れ、当日の接種可否を確認するのが安心です。かかりつけ医に、数日前からの体調の変化や睡眠の様子を伝えることで、より的確な判断が受けられるでしょう。
当日の持ち物と服装でスムーズな受診を
予防接種をスムーズに受けるには、当日の持ち物や赤ちゃんの服装を整えておくことが重要です。まず、忘れてはならないのが「母子手帳」「予診票」「健康保険証」「乳幼児医療証」などの基本書類です。
自治体から送られてきた予診票は、あらかじめ自宅で記入しておくと、受付や診察がスムーズに進みます。また、接種を受ける赤ちゃんには、腕や太ももをすぐに出せるような服装が適しています。上下セパレートタイプの服や、前開きのロンパースなどがおすすめです。
おくるみやタオル、替えのオムツ、ミルクや水分も持参しておくと、待ち時間や接種後の対応も安心です。医療機関によっては、接種後にしばらく院内で様子を見るよう求められることもあるため、時間に余裕を持って訪れるようにしましょう。
母子手帳と予診票の記入ポイント
予防接種当日には、母子手帳と予診票の持参が必須です。母子手帳には、過去に受けたワクチンの履歴や健康状態が記録されており、医師が接種の可否を判断する際の重要な手がかりになります。
また、複数のワクチンを同時に受ける場合は、接種間隔や重複の有無も母子手帳で確認できますので、必ず最新の状態にしておきましょう。予診票については、接種するワクチンごとに用意されており、体調や既往歴、アレルギーの有無などを記入する欄があります。
発熱や風邪の症状があった日付、薬の服用履歴なども詳しく書いておくと、医師の判断がより的確になります。記入は前日までに済ませ、記載に迷う部分があれば空欄のまま持参し、当日医師に相談するとよいでしょう。丁寧な記録が、赤ちゃんの安全な接種につながります。
接種後の過ごし方と副反応への備え
ワクチンを接種したあとには、一時的な体の変化が起こることがあります。赤ちゃんが泣いたり、腫れたり、熱を出したりすることも珍しくありません。
こうした副反応への正しい理解と備えが、落ち着いて対応するためのカギになります。このセクションでは、接種後に注意すべきポイントや、受診の必要性を判断する目安についてわかりやすくお伝えします。
接種後によくある副反応と見守り方
予防接種のあと、赤ちゃんの体には一時的に変化があらわれることがあります。これはワクチンに含まれる成分に対して、免疫反応が起こっている証拠であり、多くの場合は心配のいらない自然な反応です。
よく見られる副反応としては、注射した部分の赤み・腫れ・硬くなるといった局所反応、または軽い発熱、機嫌が悪くなる、眠たくなるなどの全身反応が挙げられます。これらは通常1~3日で自然におさまることがほとんどです。
ただし、赤ちゃんが強く泣き続けたり、食欲が明らかに落ちたりした場合には、無理に様子を見ず、かかりつけの医師に相談しましょう。また、解熱剤の使用については自己判断せず、事前に医師の指示を受けておくと安心です。
接種後はできるだけ静かな環境で赤ちゃんを見守り、いつもと違う様子があれば、時間帯に関係なくメモしておくと、必要時にスムーズな対応につながります。
すぐ病院に行くべき症状とは?判断のポイント
接種後の副反応の多くは軽いものですが、ごくまれに注意を要する症状が現れることがあります。特に「アナフィラキシー」と呼ばれる重いアレルギー反応は、接種後30分以内に発症することが多いため、医療機関で接種後に様子を観察する時間が設けられているのです。
万が一、自宅に戻ったあとに以下のような症状が現れた場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。具体的には、顔色が青白い・唇が紫色になる、呼吸が苦しそう、全身にじんましんが出る、何度も嘔吐する、ぐったりして反応が鈍い、高熱が長く続く、などが挙げられます。
また、けいれんが見られた場合は救急受診が必要です。判断に迷うときは、#8000(こども医療電話相談)などの地域の医療相談窓口を利用するのもひとつの方法です。何かおかしいと感じたときには「様子を見る」より「相談する」ことを優先しましょう。
赤ちゃんを安心させるためにできること
予防接種は赤ちゃんにとって初めての経験となることが多く、注射の痛みや慣れない場所での緊張から、泣き出したり不安定になったりすることもよくあります。そんなときこそ、保護者の安心した表情と声かけが、赤ちゃんにとって一番の安心材料になります。
接種前から抱っこしたまま穏やかに声をかけたり、好きなタオルやおもちゃを持たせたりすると、気持ちが落ち着きやすくなります。接種後も赤ちゃんが泣いた場合は、「よくがんばったね」と優しく声をかけ、必要であれば母乳やミルクをあげたり、抱きしめたりして安心感を与えてあげてください。
また、予防接種のたびに保護者が緊張してしまうと、その不安が赤ちゃんにも伝わってしまうため、事前に流れを理解して心の準備をしておくことも大切です。毎回の接種が赤ちゃんにとって嫌な記憶にならないよう、笑顔で寄り添う姿勢を心がけましょう。
まとめ
赤ちゃんの予防接種は、生後2か月から1歳にかけて何度も訪れる大切な機会です。感染症の重症化を防ぎ、健康な成長を支えるために、計画的にスケジュールを立てて取り組むことが大切です。
接種前には体調や機嫌をよく観察し、当日の持ち物や服装も準備しておくことで、スムーズに受診できます。接種後は副反応に注意しつつ、赤ちゃんの様子を穏やかに見守りましょう。万が一の症状にも慌てずに対応できるよう、事前に相談先を確認しておくと安心です。
そして何より、保護者の気持ちの安定が赤ちゃんにも伝わります。不安や疑問があるときは、一人で抱え込まず医師や保健師に相談しながら、安心して予防接種を進めていきましょう。